講座概要
concept
いまなお多くの設計者に愛される建築家・吉村順三(1908-97)。
その設計手法を仔細に解析しながら、「吉村が住宅設計で目指したものは何だったのか?」を詳らかにし、氏の方法論を現代の住宅設計に受け継いでいく講座です。
これまで吉村順三の住宅作品については、概して表面的・情緒的な印象批評が多く、その精緻な設計手法の舞台裏に迫る解析はほとんど試みられてきませんでした。それはまた、吉村の過剰な神格化を許すことにもつながり、氏の設計を現代の視点で評価しづらい環境すら醸成してきました。「とにかく佇まいが良い」といった印象論だけで吉村の設計意図を後世に伝えるのは困難で、このままでは現代の住宅設計に生かせたはずの方法論の数々が当たり障りのない印象論のなかに埋没するおそれすらあります。
そこで本講座は、建築界に漂うある種の吉村幻想にとらわれることなく、吉村順三が一つひとつの住宅作品をどのように捉え、どのような方法でかたちにしたのかを実務レベルで解析することにより、建築家・吉村順三の実像に迫っていきます。
講師は吉村順三設計事務所OBで建築入門書のベストセラー『住まいの解剖図鑑』の著者でもある増田奏氏。また、先に開催された企画展「建築家・吉村順三の眼」(2023.12-2024.3)では学部をあげて展示用模型などの製作に協力された鈴木信弘氏(神奈川大学建築学部教授)。両氏が「いま取り上げるべき吉村作品」を厳選し、各住宅で用いられたプラニング、モジュール、寸法の考え方などを細かく紐解きながら吉村設計術の「なぜ?」を解き明かします。素顔の吉村像を知るまたとないチャンスにもなるでしょう。
当スクールの「住宅設計上級講座」第一弾です。
住宅設計についてはひと通り知識と経験を得たというベテランの方にとっては、次なるステージの足がかりとなる多くの示唆に富む講座になることをお約束いたします。
講座の詳細
curriculum
日時/テーマ | 詳細(予定) | 講師 |
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■1時間目 11月8日(金) 軽井沢の山荘(前編)/4間モジュールと湧き上がるプラン | 最も著名な吉村作品といえる「軽井沢の山荘(1962)」を解析。プランニングの核となる「4間÷3」の発想を軸に吉村の住宅観、寸法観に迫ります。のちの作品に多大な影響を及ぼした、通称「湧き上がるプラン」(所員たちによる呼称)の概念を整理しながら吉村プランニングの知られざる特徴を明らかにしていく1時間目です。 | 増田奏 鈴木信弘 |
■2時間目 11月29日(金) 軽井沢の山荘(後編)/湧き上がるプランはいかに変奏されたか? | 「山中湖の山荘C(加藤邸/1975)」「小川邸(1975)」、さらには「ポカンティコヒルの家(1974)」など、軽井沢の山荘の考え方がうまく応用された作品群を解析しながら、吉村が好んで用いた「湧き上がるプラン」に込められた想いと現代住宅への可能性を新たな視点で深堀りしていきます。 | 増田奏 鈴木信弘 |
■3時間目 12月20日(金) 浜田山の家/キャンティレバーを愛した理由 | 「軽井沢の山荘(1962)」「浜田山の家(田宮邸/1965)」に代表されるキャンティレバーが用いられた作品群を解析しながら、吉村が惹かれた「住宅×キャンティレバー」の魅力を設計手法の面から考察します。浜田山の家の兄弟分ともいえる「久我山の家(原邸/1965)」など類似の作品を行き来しながら考える、キャンティレバー住宅に特化した1時間です。 | 増田奏 鈴木信弘 |
■4時間目 1月17日(金) 国際文化会館住宅/いまこそ、可変プランの隠れた傑作を再評価しよう | 前川國男、坂倉準三との共同設計で知られる「国際文化会館(1955)」。その裏手につくられた館長、副館長の住まいである「国際文化会館住宅(1955)」の素晴らしさは建築通のあいだでも意外と知られていません。実質、吉村ひとりで設計したとされるこの住宅のプランを解析しながら、現代にも通じる可変プランの先見性を浮かび上がらせます。 | 増田奏 鈴木信弘 |
■5時間目 2月7日(金) 御蔵山の家/小さな平屋の社内コンペに見る、吉村事務所の侃侃諤諤 | わずか16坪の平屋である「御蔵山の家(1966)」。この小さな住宅が生み出されるまでには、当時事務所に在籍していた所員たちによる侃侃諤諤の社内コンペがありました。当時提案されたいずれ劣らぬ所員案を見比べながら、それでもなお吉村案が一歩も二歩も抜きん出ていたと考えられる理由を独自の視点で紐解いていきます。 | 増田奏 鈴木信弘 |
■6時間目 2月28日(金) 南台町の家/吉村式ゾーニングはどこから来て、どこへ向かったか? | 何年にもわたって増築・改築が重ねられた吉村の自邸(南台町の家[1957])。そのプランニングの変遷を追いながら、吉村が住宅のプランニングにおいて大切にしていた核は何だったのかを考えます。吉村のゾーニングにレーモンドや米国滞在が与えた影響を考察する最終回です。 | 増田奏 鈴木信弘 |
実施概要
outline
項目 | 内容 | 備考 |
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日程(全6回) | 2024年11月8日(金)/11月29日(金)/12月20日(金)/1月17日(金)/2月7日(金)/2月28日(金) | 講師の都合により休講または日程の延期が発生する場合があります |
時間 | 18~20時(2時間程度) | 内容によって多少前後します |
受講者定員 | 30名 | お申し込み多数の場合は先着順になります |
開講決定受講者数 | 8名 | 講座スタートの2週間前までに規定の人数に達しなかった場合は開講を見送らせていただく場合があります |
受講料(早割) *10月25日(金)お申し込み分まで | 79,000円(+税) | 講座スタートの2週間前までにお申し込みいただいた方は早期割引として通常価格より10,000円割引になります |
受講料(通常) | 89,000円(+税) | ― |
受講形態 | Zoomミーティング | Zoomでやり取りできる環境を各自ご準備ください |
こんな人におすすめです | 吉村順三の建築を理論的に学びたい人、自身の設計スタイルを構築するきっかけを摑みたい人、住宅設計の基本的な考え方を学びたい人など | 建築業界以外の方の受講も大歓迎です |
講座のアーカイブ視聴 | 講座終了後3カ月間は講義の録画を何度でも視聴できます | 視聴方法は受講者に個別にご案内いたします |
アーカイブ受講のみも可能 | 講座をリアルタイムで受講せず、すべてアーカイブで受講することも可能です(講座開始後のお申し込みもOKです) | 講座スタート後も随時お申し込みいただけます。ご希望の方は「講座のお申し込み」フォームからお申し込みください |
受講料の支払い方法 | 銀行振込のみとなります | 受講のお申し込み後にお支払い方法をご案内いたします |
申し込み締切日 | 2024年11月7日(木) | ― |
本講座を収録した映像は適宜編集を行いスクールの広報活動などにも使用させていただきます。あらかじめご了承のうえお申し込みください。
お申し込みから受講まで
flow
①本サイトの「講座のお申し込み」」フォームに必要事項を入力のうえお申し込みください。
②お申し込みの確認後、メールにて受講料のお支払い窓口をお伝えいたしますので、受講料のお支払いをお願いいたします。
③受講料のお支払いが確認でき次第、お申し込み完了となります。
①講座はZoomによるオンライン形式です。各自のPCなどでZoomが正常に利用できる環境であることをご確認ください(音声の不具合がないかなど)。
②受講の際に使用する資料などは、事務局より適宜PDFデータなどでお送りいたします。
③具体的な受講方法などは、講座の開催前までにあらためてお知らせいたします。
①講座の模様は毎時間終了後にアーカイブ視聴が可能です(終了後1~2日から視聴可能)。視聴の方法は受講者に別途お知らせいたします。
②講座の最終日から3カ月間は講座内すべての講義のアーカイブ映像を視聴できます。